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ヤムイモは、漢方で滋養・強壮、強精とされる。わが国にも自生するヤマノイモの一種であるが、このヤムイモも同じくヤマノイモ科に属し、フィリピンを初めとする東南アジアで広く分布しています。
ヤムイモはフィリピンでは「UBE」の名があるが、わが国ではヤムイモという通称以外に、塊茎を切ると鮮やかな赤紫を呈するところからパープル・ヤム、さらに機能性食品として乾燥後に微粉末にしてパープル・ワイルド・ヤムと名付けられています。
原産地フィリピンでは一般的な食材として、生のものは茹でたり焼いたりスプレッド状にして食し、粉末にしてケーキ、タルト、シャーベットなどに用いられます。栄養的には炭水化物と食物繊維が中心ですが、カルシウムと鉄の含有量が多い。しかしパープル・ヤムの真骨頂は、鮮やかな赤紫色の成分であるアントシアニンを初めとする機能性成分のバラエティーです。
ポリフェノールは植物界に広く分布する一群の芳香族化合物で、その抗酸化作用や抗ガン作用で注目されるタンニンやカテキン、赤ワインのフラボノイドなども含めた総称ですが、パープル・ヤムの総ポリフェノール含量は9.31%にもなります。その代表的なポリフェノールはアントシアニンで、これは眼の眼精疲労や近視予防効果でつとに知られた成分ですが、体内で活性酸素の生成を抑制することを通じて、発ガン、動脈硬化、心疾患、炎症性疾患を予防し、老化防止にブレーキをかけて、脳細胞にも体細胞にも、本来の生き生きとした活性をもたらす働きをすることが、最近の研究によって明らかにされてきています。
ヤマノイモの滋養強壮効果は、サポニンの働きに加えてネバネバ成分であるムチンがタンパク質の効率的な代謝を促すことのよると考えられているが、このパープル・ヤムにも、サポニンのようにステロイド骨格を持ついくつかの物質が発見されており、その一つがジオスゲニンです。
ジオスゲニンはDHEA(デヒドエピアンドロステロン。副腎で作られるホルモンで若さを保つホルモンとして知られています)の前躯体と考えられている物質で、女性ホルモンの失調によって起こる月経前症候群、子宮内膜症、過敏性乳房、不定愁訴、骨粗鬆症、更年期障害、乳がんなどを防ぐことに寄与するとされる物質です。ジオスゲニンのこのような働きについては、卵巣を摘出したマウスにジオスゲニンを投与することによって、乳房上皮の発達が確認されたという実験も報告されています。
なお、ヤムイモ(パープル・ヤム)に似たものとして「紫イモ」というイモが市販されていますが、これはサツマイモ(ヒルガオ科)の改良腫であって、ヤムイモとは別種です。